ENJOY!ウィークエンド
Vol.6 6月21日(土)14:30~15:30

吉野直子さんに

サントリーホール
チェンバーミュージック・ガーデンへの
思いをうかがいました
 
6月7日から始まったサントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン(以下CMG 会場:サントリーホール・ブルーローズ)で、4年連続で参加しているハープ奏者の吉野直子さんに、CMGへの思い、聴きどころ等を語っていただいた。
 
「ENJOY!ウィークエンドVol.6 6月21日(土)14:30~」に出演される。
 
コアなファンと
新しいファンが一堂に
 
気楽に室内楽を聴けるように、
という趣旨で行なわれている
「ENJOY! ウィークエンド」は、
休憩なしの一時間の長さで、
チケットの値段もとてもリーズナブルに
設定されているのが、とても良いと思います。
 
 
この「ENJOY! ウィークエンド」には
毎年参加させていただいており、
クラリネットのリチャード・ストルツマンさん、
フルートの高木綾子さん、
チェロのマリオ・ブルネロさんや
クレメンス・ハーゲンさんとのデュオなど、
いろいろな編成で演奏してきました。
今年のフィナーレでは、
川本嘉子さんと佐久間由美子さんと一緒に、
武満徹さんのトリオを演奏します。
 
もともと室内楽が好きな方は、
聴きたいものを自ら探して
コンサートホールに足を運ばれると思います。
 
その一方で、室内楽を聴いてみたいけれど、
どのコンサートに行ったら良いのか分からない、
あるいは室内楽はちょっと敷居が高くて…、
と思っている方もいらっしゃると思います。
「ENJOY! ウィークエンド」では、
そのような方々のために、
室内楽を好きになっていただくための
プログラムがたくさん用意されているので、
コアなファンと新たなお客様が
とてもいいバランスで、
ホールにいらしているのではないかと思います。
 
ブルーローズはとても素晴らしいホールですし、
雰囲気も素敵です。
週末のお昼のひととき、
ちょっとコンサートを聴きに行ってみようかしら、
という感じで、
気軽にホールにお越しいただきたいと思います。
 
チェンバー・ミュージック・ガーデンの時は、
ふだんと違って、ホールを横長にして使いますから、
演奏者にとっては、
お客様に囲まれるような感じになります。
お客様との距離も近いですし、
トークを入れながら進めるので、
身近で触れ合うような感覚で
音楽を楽しんでいただけると思います。
 
休憩なしのコンサートなので、
プログラムを作るときは、
一つの物語のような流れを意識します。
しっかりとした長さの本格的な作品もあれば、
小品もあります。
 
今回の「ENJOY! ウィークエンド」では、
少し珍しいものを、と思い、
ジョージ・クラムやマリー・シェーファーの作品を
中心にプログラムを考えました。
編成としては、ソプラノと打楽器、
そしてカルテットなどが入ります。
 
プログラムの幕開けは、
アルゼンチンの作曲家ヒナステラの
民族色豊かな「トゥクマンの歌」です。
 
続くクラムの「マドリガル第3巻」は、
ソプラノと打楽器とハープのための作品です。
ソプラノがささやくように歌う場面があったり、
打楽器奏者が
ハープの弦を打楽器のように
叩く場面があったりして、
視覚的にも楽しんでいただけると思います。
 
次は、細川俊夫さんの編曲による日本民謡集から
「黒田節」と「五木の子守歌」の二曲を、
ソプラノとハープで演奏します。
この日本民謡集は今年の夏以降、
海外で演奏することになっています。
 
プログラムの最後は、
シェーファーの「テーセウス」という
カルテットとハープ、そして最後に歌が入る作品です。
シェーファーは他にもハープのための作品を書いていて、
代表的なものに、
「アリアドネの冠」というシアター・ピースの要素を
含む曲があります。
「テーセウス」は、
その「アリアドネの冠」の流れを汲む作品です。
 
少し珍しい、
世界の民族音楽の旅をするような気分になって、
楽しんでいただきたいプログラムです。
 
 
ハープの魅力
 
母がハーピストだったので、
小さい時からずっとハープの音を聴いて育ちました。
そのようなことも関係があるのか、
私にとってはハープの存在自体が、
本当に自然なものです。
ハープの魅力というのは、
弦を直接指ではじきますから、
楽器と私自身の間になにも入らないという意味で、
ストレートに自分の感情を伝えられることなのでは、
と思います。
 
ハープでは弦をはじいた後は
弦の振動が終われば音も終わります。
ヴァイオリンのように
音をずっと伸ばすことができない。
逆に、弦の振動をすぐ消しても、
楽器全体が響く構造になっているので、
どこかに響きが残ってしまい、
パッとは消えず、本当に短くて鋭い音は出ない。
それがハープらしさでもあるのですが、
難しさでもあります。
 
どのように工夫して、
いかに音が長く響いているように聴かせられるか、
あるいは、逆にハーモニーが混じらないように、
いかに響きをうまく止めながら弾くことが出来るか
……制限があるなかで逆に広い世界を作っていく、
そのあたりが面白さであり、難しさでもあります。
 
ハープの7つのペダルは、
シャープやフラットを作るためにあります。
曲にもよりますが、転調が多くなると、
ペダルの操作も大変になります。
手が忙しく動いているのは見えますが、
ペダルの大変さに気づかない方も意外に多いのでは、
と思います(笑)。
表には見えない部分ですが、
ペダルを踏むタイミング、
いかに雑音が出ないようにペダル操作をするか
ということも、ハープの難しさの一つですね。
 
 
平均律で調律を
 
現代では、いろいろな調に転調するので
平均律で調律をします。
基本はチューナーで合わせますが、
最終的には自分の耳を信じ、
私の場合は、
上の方の音は少し高めに合わせていると思います
その方が、私の耳には心地良いのです。
ですから、完全な平均律ではないですね。
綺麗に響くポイント、
それはたぶん人それぞれだと思います。
 
演奏する曲によってもチューングは違ってきますし、
楽器それぞれの癖というのもあるので、
それもチューニングに影響してきます。
 
ですから、他の人がチューニングをした楽器を弾くのは、
ちょっと違和感があります。
というか、ほとんどやったことはないですが(笑)。
 
フルートの方に言われたことがあるのですが、
ピアノと演奏する時は、
フルートは高音域が高くなりがちなので、
高めにならないように押さえて吹くけれども、
私のハープと弾く場合は、
そのまま自然に吹いて合うから嬉しい、
と言われたことがあります。
 
オーケストラの中で演奏する時は、
もう少し忠実にチューナーで合わせるようにします。
ハープが二台ある場合は、
もちろんハープ同士が
まず合っていないといけないですし。
 
ハープの弦は、大部分がガット弦なので、
舞台の温度や湿度の変化にかなり影響を受けます。
二時間のコンサートの間にも
少しずつ変わっていってしまうので、
途中で調節しながら進めます。
 
おそらく、調律の仕方も
演奏家の個性に含まれるものなのではないかと思います。それは、弦楽器でも管楽器でも同じだろうと思います。
 
 
今後の活動
 
今年は、細川俊夫さんの作品を
海外で演奏する機会が多く、
10月にはスコットランド室内管弦楽団と一緒に、
新しいハープ協奏曲の初演をすることになっています。
 
ハープという楽器をいろいろな面から、
なるべく多くの方に知っていただければ、
といつも思っています。
ソロももちろん大切ですが、
いろいろな楽器との組み合わせで
聴いていただく室内楽も大切にしています。
そして、日本だけでなく、
海外での活動もずっと続けていくことができれば、
と思っています。
 
良い響きのするホールで、
自分自身とても集中して演奏ができ、
同時にお客様も一緒に集中して
聴いてくださっている瞬間が、一番幸せです。
 
 
 
 
 
ENJOY!ウィークエンド
Vol.6 6月21日(土)14:30~15:30
ハープ:吉野直子
ソプラノ:半田美和子
打楽器:安江佐和子
フルート:佐久間由美子
ヴァイオリン:白井圭
カルテット・エクセルシオ
 
ヒナステラ:トゥクマンの歌 op. 4
クラム:マドリガル第3巻
細川俊夫:日本民謡集から黒田節、五木の子守歌
マリー・シェーファー:テーセウス