Suntory Hall Chamber Music Garden
サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン
会場:サントリーホール・ブルーローズ
写真提供:サントリーホール
私のイチオシ 第1弾
(by アッコルド)
今年のサントリーホール チェンバーミュージック・ガーデンから、私のイチオシのコンサートをご紹介したい。
パシフィカ・クァルテットと現代音楽の世界「燦・凶・礫・憶(さん きょう れき おく)」
第1回目のサントリーホール チェンバーミュージック・ガーデンで、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲演奏に登場しているパシフィカ・クァルテットが、今年は「室内楽アカデミー ゲストコンサート#2」に登場する。
──6月17日(火)19時(18時20分開場)
彼らは、シュラミット・ラン作曲の弦楽四重奏曲第3番「燦・凶・礫・憶(さん きょう れき おく)」を演奏する。ミュージック・アコード、サントリーホール、ウィグモアホール共同委嘱作品で、アジア初演である。
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パシフィカ・クァルテットが現代作品をどのように演奏をするのか。2004年、パシフィカ・クァルテットのヴァイオリン奏者のシッビ・バーンハートソンにインタヴューをしたとき、彼は興味深い話をしている。
シッビ「どうやって現代の曲に取り組むのですか、どのようにアプローチするのですか、とよく訊かれるのですが、現代曲はこのように取り組まなければいけない、このようなアプローチをしなければならない、というように決めつけてしまっている方が多いようです。
実は本当のところ、モーツァルトとそれほど違いはありません。もちろん、使う言語も違いますし、当然のことですが、リズムの作りも違います。
でも、私達は非常に多くの現代曲を取り上げていますが、その経験から言いますと、基本的にはモーツァルトを演奏するときと何も変わらないアプローチをして構わないのだと思います。」
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シュラミト・ランは、イスラエル系アメリカ人女性作曲家。テルアビブの生まれで、14歳の時にマネス音楽院の奨学生としてニューヨークに移り住んでいる。現代を代表する作曲家のひとりで、彼女の作品はYouTube等でも触れることはできる。
彼女の作品は、ニューヨーク・フィルハーモニック、イスラエル交響楽団、シカゴ・シンフォニー、フィラデルフィア管弦楽団、クリーヴランド管弦楽団……といった世界の主要オーケストラで、ズービン・メータ、ダニエル・バレンボイム、ピエール・ブーレーズ、といった指揮者の下、演奏されていて、特に『交響曲』(1990年)では、ピューリッツァー賞(音楽部門)を受賞している。
シカゴ大学の教員であり、シカゴ交響楽団ならびにシカゴ・リリック・オペラのコンポーザー・イン・レジデンスも勤め、彼女の最初のオペラもシカゴ・リリック・オペラによって委任されている。
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このシュラミット・ランの作品の他に、パシフィカ・クァルテットが講師を務める「サントリーホール室内楽アカデミー」の受講生(サントリーホール室内楽アカデミー選抜フェロー)との共演で、メンデルスゾーンの 弦楽八重奏曲 変ホ長調 op. 20、他も演奏される。
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サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデンは、毎年温暖な季節に行なわれる。庭を散歩するには快適な時期であることが嬉しい。 ちょうどサントリー美術館では、この時期、「徒然草 美術で楽しむ古典文学」が行なわれている。ちょっとコアな弦楽四重奏作品を聴くにあたって、日本の古典と現代作品との対照的な鑑賞は如何?
サントリー美術館は近い。
(http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2014_3/index.html)
★コンサートは、6月17日(火)19時(18時20分開場)
★なお、サントリーホール室内楽アカデミーの講習は、
6月15日(日)18時(17時45分開場)
詳細は
パシフィカ・クァルテット
The Pacifica Quartet
写真左から、ブランドン・ヴェイモス(チェロ)、シミン・ガナートラ(ヴァイオリン)、シッビ・バーンハートソン(ヴァイオリン)、マスミ・バーロスタード(ヴィオラ)。
1994年結成。シミンとブランドンとシッビは十代の頃から一緒に演奏をしてきた仲。後にマスミが加わり、現在のパシフィカ・クァルテットとなる。アメリカ西海岸が発祥の地で、グループ名もThe Pacific Oceanからとられている。
米国内の三大コンクールを次々と制覇(96年コールマン室内楽コンクール、97年コンサート・アーティスツ・ギルドコンクール、98年ナウンバーグ室内楽コンクール)。
2002年、将来を期待されるクァルテットに贈られるアメリカ室内楽協会クリーヴランド・クァルテット賞受賞。同年春にはリンカーンセンター・チェンバーミュージック2のレジデント・クァルテットに抜擢され2003年から二年に亘り活動する。
2006年、エイヴリー・フィッシャー・キャリア・グラントを受賞。
2009年、43年にわたりグァルネリ弦楽四重奏団が開催してきたニューヨーク・メトロポリタン美術館のレジデンス・クァルテットの後継者に任命される。2009年度のグラミー賞受賞。
イリノイ大学にて後進の指導にあたるほか、シカゴ大学、ハーバード大学ロンジー音楽院のレジデント・クァルテットも務めている。